本研究は、メチルプレドニゾロン(MP)の大量療法が、脊髄損傷後の脊髄虚血に対して保護効果があるかどうかを確認するために行なった。〔方法〕Wistarラット20匹に対してT7-8椎弓切除を行い、140g圧3秒間のクリップ硬膜外圧迫により脊髄損傷を作製した。損傷30分後に生理食塩水、30mg/kg、または60mg/kg MPの静脈内投与を行なった(各投与群n=4)。損傷2時間後に、オートラジオグラフィー法を用いて、損傷部およびその近接部(5mm頭側・尾側)の脊髄血流を測定した。生理食塩水、30mg/kg MP投与群(各n=4)では、損傷6時間後においても同様に脊髄血球を測定した。脊髄血流の正常値測定のため5匹を使用した。また、脊髄損傷の程度を確認するため4匹を使用し、損傷作製後6週間、下肢運動機能を傾斜板法により観察した。〔結果〕損傷2時間後において、灰白質の脊髄血流は損傷部に近づくにつれて減少し、損傷部では著明な低下がみられたが、各治療群で差はなかった。白質血流も、損傷部では著明に低下し、各治療群で差はなかった。しかし、近接部の白質血流は、MP投与群において有意な低下がみられたが、生理食塩水群での低下はなく、さらに3-5mm尾側では血流はかえって増加していた。損傷6時間後では、損傷部の灰白質・白質の脊髄血流は、さらに低下がみられ、生理食塩水・30mg/kg MP群間で、脊髄血流の値に差はなかった。〔結論〕脊髄損傷後、脊髄の血流は、損傷部および近接部において、少なくとも6時間後まで、進行性に低下していた。MP大量投与は、脊髄損傷による脊髄の血流低下を防ぐことはできなかった。
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