1.中枢性疼痛(視床痛)表在性疼痛優位群では、電気生理学的に外側視床感覚核の自発発射活動が低く、逆に、内側の随板内核群の活動は、特にその背側部で高かった。周波数解析から、その活動のピークは200-400Hz帯域に認められた。又、この群では不規則なburst放電を認めることが多く、特に髄板内核背側部で頻発していた。これらの所見は、脳循環代謝の解析により示された、この群における皮質糖、酸素代謝の維持と対応しており、さらに、内側の随板内核群の活動がirritableな状態にあることを示唆した。一方、表在性疼痛が強い例ほど患側皮質中心溝付近で、酸素代謝に対する相対的局所糖代謝が亢進しており、又、酸素摂取率も高かった。従って、中枢性(表在性)疼痛の成因として、視床随板内核群の活動異常、及び、皮質中心溝付近の異常神経活動が重要な役割を演じていることが推定される。 2.難治性不随運動固縮例では、局所脳糖代謝の解析から、大脳基底核の活動が亢進し、一方、皮質中心溝付近の活動は低下していた。これらの例では、L-DOPAの投与により局所脳糖代謝が正常例と同様のパターンに変化した。これに対し、Chorea例では患側基底核で活動が低下し、運動前野、運動野で活動が亢進していた。従って、固縮とHyperkinesiaにおける基底核と皮質の機能は対照的であると考えられる。又、Dys-tonia例では広汎な基底核一運動視床機能の異常を認め、一方、片側振戦例では、症状対側皮質中心溝付近、視床前部において局所的な活動の亢進を認めた。従って、これら不随意運動の維持、伝達には、基底核-視床-皮質を含む神経回路が重要な役割を演じていることが推定される。 3.基底核、視床内微量伝達物質の測定は、正常例、実験的振戦例(サル)において行っており、難治性不随意運動の病態の神経化学的側面について検討している。
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