研究概要 |
本年度は当初の計画通り、攣縮脳血管で見られる高エネルギ-燐酸の著明な減少が、攣縮の成因として重要であるかを調べるために、高エネルギ-燐酸の動脈壁含量の時間経過を測定している。クモ膜下出血後の脳血管攣縮は特徴的時間経過をもっておこってくるが、その過程において燐酸値低下の時間経過と動脈狹小化の時間経過との関連性は成因論的考察のうえで重要な問題である。そこでイヌの脳底動脈に血管攣縮を誘導し(大槽自家血注入、double hemorrhage canine model),血管撮影で3、5、7、14日後目の攣縮程度を測定し、同時にATP,ADP,AMP,GTP,GDP,Creatine phosphate(CrーP)含量をHPLCで測定した。血管撮影上3日目より狭小化が始まり、5日目、7日目にかけて攣縮はさらに強さを増していく。14日目には回復の傾向を示すがまだ動脈の径は注入前のコントロ-ルと比して小さい。我々のprotocolでは血液注入量を多めにしているために従来経験されているところよりも攣縮の経過が長くなっている可能性がある。ATP,GTP,CrーPの高エネルギ-燐酸の動脈壁含量は3日目より減少を始め5日目、7日目にさらに減少の度合を強めていく。すなわち血管写上の攣縮の発生と高エネルギ-燐酸の低下との間には時間経過の上で並行関係が認められた。ただし14日目には高エネルギ-燐酸は以前として低値を示したままで血管撮影上の回復傾向とのずれを認めた。現在、高エネルギ-燐酸含量のデ-タを血管総蛋白含量、総クレアチン含量とnormalizeして検討しているところであるが、もしこのずれが真実であるとすると血管径は代謝障害が残っていても回復していくことになる。さらに遅い時期で高エネルギ-燐酸の回復の過程がおこっているのか調べる必要があると考えている。第二年度は高エネルギ-燐酸量を操作したときに収縮弛緩反応がどのように変化するか観察していく予定である。
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