研究概要 |
本年度は,ヒト神経膠腫組織切片を用いたGFAP遺伝子の発現調節に関する検討を行なった。 手術時採取した非腫瘍部小脳,astrocytoma,anaplastic glioma組織を液体窒素で急速凍結後,6μmの連続凍結切片を作成し,免疫組織化学とin situ hybridizationに供した。in situ hybridizationに際して用いるプローブは,他の中間径フィラメントとの交差を避けるため,ホモロジーの低い3'non-coding regionのanti-sense 44merを使用することにした。予め,GFAP陽性神経膠腫細胞株,GFAP陰性神経膠腫細胞株,悪性リンパ腫株を対象にNorthern blot分析を行なったところ,GFAP陽性神経膠腫細胞株にのみ3.4-kbのバンドがみられ,特異性が高いことが確認された。in situ hybridizationに際して,固定には4%パラホルムアルデハイドで室温30分かけた。prehybrydizationには50%ホルムアミド,4xSSCで室温2時間かけた。プローブは^<35>S-dATPを用い3'tailingでラベルした。1x10_5dpm/μlに調整したハイブリ液で37℃で12時間hybridizeした。洗浄には2xSSC室温20分,次いで0.1xSSC 42℃40分を2回行なった。オートラジオグラフィには乳剤を塗布し,4℃7日間おいた後,現像し更にヘマトキシリン染色し明視野で観察した。その結果,小脳ではBergmann's gliaおよび顆粒層内のastrocyteにgrainの集積がみられ,分子層内のBergmann's gliaの突起には集積は殆どみられなかった。腫瘍において,anaplastic gliomaでは全くgrainは認めれなかったものの,astrocytomaでは弥漫性にgrainの集積がみられた。これらの所見は,概ね免疫染色のGFAP発現結果とよく対応していた。 従って,前年度に実施した培養細胞株を用いたGFAP発現機構の検索結果と併せて検討すると,ヒト神経膠腫細胞でのGFAP発現調節は,転写レベルで制御されている可能性が高いと考えられた。
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