研究概要 |
温熱による血管内皮細胞の形態変化について,当教室の新井田が培養樹立したラット脳血管内皮細を用い,42〜45℃,1時間の加温による変化を,対教増殖期とconfluentとなった時期のそれぞれについて検討した。42.0℃ではいずれの時期にも変化はみられなかった。43℃では,confluentな内皮細胞は加温直後より細胞間にわずかな間隙が見られるようになり,43.5℃以上でこの傾向はさらに強くなった。対数増殖期の細胞は,43.5℃で経時的観察にて次第にround化し遊離する傾向がみられた。44.0℃では加温直後より内皮細胞はroond化し次第に遊離し,45℃では加温直後より細胞はgohst化しほぼ全てが死滅した。 コロニ-法により内皮細胞の耐熱性について検討すると,42.0〜43.0℃の加温では加温後1時間まではsurviving fraction(SV)に差はなかったが,1時間以降では43.0℃加温例で次第にSVは低下した。44℃加温では加温15分後よりSVは著明に低下し,90分加温では生存しなかった。43.5℃加温では43.0〜44.0℃加温の中間を推移する傾向を示した。 血液脳関門に対する温熱の影響をみるため,内皮細胞のmonolayerを用い,加温による様々なトレ-サ-の透過を比較検討するモデルを作成することとした。しかし,最近の報告では通常の内皮細胞のmonolayerにはtight junctionと共にgap junctionも見られると言われており,in vitroで厳密な血液脳関門モデルを作成すること自体現時点では難しい点が多い。そこで,現在内皮細胞増殖に及ぼすextracellular matrixやastrocyteの影響を検討中である。今後,このモデルを用いて温熱による内皮細胞monolayerの透過性変化について検討する予定である。
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