研究概要 |
平成3年度は動物モデルの確立、痴呆の定量化を、4年度は抗痴呆療法の見当評価を行ってきた。i)動物モデル作成:雄Sprague-Dawleyラットの一側前脳基底核Meynert核にイボテン酸5μg,0.5μLを局所注入した。ii)抗痴呆療法:内科的治療ー病変作成3日後より塩酸Bifemeran(BH)15mg/kgの腹腔内投与を2週間行った。外科的治療ー作成1週後に自家迷走神経下神経節(X)を大脳皮質へ移植した。iii)動物の条件付け:後述する事象関連電位P300の記録のため、BH投与群では投与開始より2週間、移植群では移植手術後2週より(出現率90%の基準音(2kHz)に対し)10%でat randomに出現する標的音(1kHz)に同期して600msec遅れた尾への電気刺激を2週間与え続けた。破壊非治療群と非被壊群にも行った。iv)痴呆の評価:条件付けした動物のP300を記録した。尾へ電気刺激を与えずにP300を記録できた。非破壊群で349.7±22.3msec、破壊非治療群(痴呆モデル)で393.0±25.5msecと両者間に有意差(p<0.001)を認めた。BH治療群で342.4±17.7msecと短縮し、有意な(p<0.001)治療効果を認めた。X移植群でも339.4±25.5msecと有意な抗痴呆効果を認めた。v)脳内muscarine Ach受容体(mACh-R)、acetylcholinesterase(AChE)、choline acetyltransferase(CAT)測定:BH治療群でmAch‐Rは破壊群より増加し、AChE、CATはあまり変化なかった。X移植群は現在測定中である。BH治療ではmAch-R結合能の増加によるAch系神経伝導の改善でのP300潜時の短縮が推測される。vi)組織化学的検索:P300測定後、各群の動物の一部に対し4%parafolmaldehydeによる灌流固定した脳をTagoらの方法にてAchE染色している。以上、実験は進行中であり、確実に成果が出て来ている。平成5年度はX移植方法を改良(Meynert核ー大脳皮質間を繋ぐX神経および神経節移植)したモデルを用いて上記の検索評価を行う。
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