上小脳動脈中心枝(穿通枝)の支配領域に関する研究ーー脳血管障害の診断・治療に関する臨床解剖学的検討ーー

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03670679
• 研究機関: 信州大学
• 研究代表者: 宜保 浩彦 信州大学, 医学部附属病院脳神経外科学, 講師 (00135146)
• 研究分担者: 小林 茂昭 信州大学, 医学部脳神経外科学, 教授 (50020772) ; 鳥山 俊英 信州大学, 医学部脳神経外科学, 助手 (70240794) ; 湧井 健治 信州大学, 医学部附属病院脳神経外科学, 助手 (60230934)
• キーワード: 上小脳動脈、 / 中心枝、 / 穿通枝、 / 回旋枝、 / 分布灌流領域、 / 脳血管障害、 / 診断・治療、 / 臨床解剖学.

研究概要

脳血管障害の中でWillis動脈輪後半部、特に上小脳動脈の病変は、脳梗塞・脳動脈瘤等の頻度は少ないものの神経内科的にも脳神経外科的にも重要な疾患である。
本研究では、従来より余り検討されていない上小脳動脈およびその近位部(脳底動脈から10mmまで部分)の中心枝について、その頻度、直径、親血管から分岐する部位、分布灌流領域、分布の特徴等について臨床解剖学的に検討した。中心枝は、穿通枝(perforating branch)と回旋枝(circumflex branch)に分類して検討した。
また、本年度は、上小脳動脈の近位部、および遠位部について臨床解剖学的に検討した。その概要は以下のようであった。
1.上小脳動脈本幹の灌流域に関して脳血管撮影で確認された上小脳動脈閉塞症例の画像診断(CT検査)で描出された病巣より、その分布灌流領域を解剖学的に明らかにし、Clinical Neuroscience誌に発表した。
2.上小脳動脈の近位部(脳底動脈から10mmまで部分)には平均1.8本の中心枝(穿通枝は1.3本、回旋枝は0.5本)が存在していた。
3.中心枝の直径は、穿通枝は0.21mmであり、回旋枝は0.39mm(平均0.26mm)であった。
4.穿通枝は、上小脳動脈の後面から74.5%、下面から25.3%が分岐しており、回旋枝は上小脳動脈の下面から61.5%、後面から26.9%、上面から11.5%が分岐していた。
5.脳底動脈から上小脳動脈中心枝までの距離を計測すると、穿通枝は上小脳動脈の近位部から分岐し、回旋枝は遠位部から分岐する傾向にあった。
6.分布灌流領域は穿通枝は脚間窩、大脳脚などに分布し、回旋枝は四丘体、上小脳脚等を灌流した。

研究成果

• [文献書誌] 宜保 浩彦: "脳底動脈瘤手術における到達経路および穿通枝の外科解剖学的検討." 脳卒中の外科. 19. 343-347 (1991)
• [文献書誌] Milisavljevic MM: "The thalamogeniculate perforators of the posterior cerebral artery.The Microsurgical,anatomy." Neurosurgery. 28. 523-530 (1991)
• [文献書誌] 外間 政信: "上小脳動脈近位部および中心枝." Clinical Neuroscience. 10. 1090-1091 (1992)
• [文献書誌] 外間 政信: "上小脳動脈遠位部." Clinical Neuroscience. 10. 1210-1211 (1992)
• [文献書誌] Kyoshima K: "Safety entry zones via the floor of the fourth ventricle in the brain stem." Journal of Neurosurgery. (1993)
• [文献書誌] Marinkovic SV,: "The surgical anatomy of the branches of the basilar artery." Neurosurgery. (1993)
• [文献書誌] 宜保 浩彦: "顕微鏡下手術のための脳神経外科解剖 IV ー脳神経と椎骨脳底動脈系ー." サイメド.パブリケションズ, 160 (1992)
• [文献書誌] Hirohiko Gibo: "Cranial vascular anatomy of the anterior circulation,in Neurovascular Surgery(eds Carter LP,Spetzler RF)" McGraw-Hill,lnc.,(1993)