研究概要 |
平成5年度は、成猫及びカオリン注入による水頭症猫を用い、クロラロース麻酔下に実験をおこなった。頭蓋内圧(ICP)、大腿動脈圧(BP)、呼吸CO_2分圧(ET・CO_2)を記録しながら、延髄網様体(Snider's map PIO,nuclreticularis parvocellularis,gigantocellularis,MRF)より単一ニューロの発射活動を連続記録し、spike discriminatorを通してスパイク数として表示した。 〔I〕延髄網様体(MRF)の化学的促通効果の検索:MRFにグルタメイトの微量注入をおこなうとBPの上昇を伴うICPの下降が惹起された。このICP下降効果は青斑核複合体(LC)の化学的促通効果と類似していた。 〔II〕MRFの単一ニューロンの発射活動とICP変動との時間的因果関係の検索:単一MRFニューロンを細胞外導出し、連続記録すると、ICPの下降に明らかに先行して自発発射の発射頻度の増加が観察された。BP、ET・CO_2には顕著な変動は認めなかった。これまでの研究で橋被蓋野(CPA)にAchを微量注入すると血圧の下降を伴うICPの亢進が惹起される。このような操作をおこないながら、単一MRFニューロンの発射活動を連続記録すると、ICP上昇に先行してMRFニューロンの発射活動は顕著に低下し、発射頻度が元の値に戻り始めるとICPも下降し元値に復帰した。この間ET・CO_2は変化していない。このようにMRFニューロンの中に、そのニューロン活動の賦活とICPの低下がニューロン活動の低下とICPの上昇が時間的に密に関連しているものが見出された。 〔III〕MRFとCPA間のニューロン結合の検索:MRFニューロンの発射活動を記録しながら、同側あるいは対側CPAに微小電気刺激を加えると自発発射が著明に抑制された。MRFニューロンの中にはCPAと抑制性結合のみられるものと、ニューロン結合を有さないものが観察された。 〔IV〕CPAが何等かの原因で発火すると中枢性ノル・アドレナリン系(LC,MRF)が抑制され脳血管が拡張し、脳血管床の増大を来しICPの上昇が起き、plateau波を形成することが示唆された。
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