顔面手、足の体表奇形の発生状況に関する調査では人種や調査方法、調査の時期により異なる結果が報告されている。われわれは日本人におけるこれらの奇形の現在の実際の発生状況を知るためには比較的広い地域の全ての新生児を対象とした長期間の調査が必要であると考え、昭和48年より宮城県内に居住する父母の間に生まれた全ての新生児を対象とした体表奇形の発生状況調査を行ってきた。調査の方法は新生児を取り扱うということで県内の全ての産婦人科医、乳児検診を担当するということで県内の全ての整形外科医と小児科医に、調査項目を印刷した調査表を送付しておき、奇形の発見ごとに返送してもらう。そのうち直接受診しない患児は現在受診している医療機関に連絡して調査し、医療を受けていない患児は直接患児の家族に連絡して調査すると共に医療機関についての相談に応ずる。このような方法で調査した昭和48年より平成元年までの間に宮城県内に居住する父母の間に生まれた全ての新生児のうち体表奇形を有して登録された患児の調査表をマイクロコンピュウタ-により整理し、さらにこれまでの年次毎の調査結果を修正した。 昭和48年から平成元年までの17年間の宮城県内に居住する父母の間に生まれた全新生児510285名のうち顔面、手、足に体表奇形を有して登録された患児は3020名 3317件であった。体表奇形は男にやや多く、男が全患児の56%を占めていた。体表奇形のうち顔面奇形は全体の60%で最も多く、ついで手の奇形20%、足の奇形18%の順であった。顔面奇形のうちでは副耳が多いが、この奇形は本調査最も多い奇形であった。副耳についで多い顔面奇形は口唇裂、口蓋裂であった。手と足の奇形では多指症が多いが、手の多指では軸前性のもが、足多指では軸後性のものが多い。現在各奇形の10000出生あたりの発生率、家系内発生の状況その他について調査中である。
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