今年度は、従来報告されていない、実験動物の年齢的要因に関する検討を行った。 実験材料としてはカニクイザル22匹、若年群(平均年齢2歳、平均体重3kg)15匹、壮年群(平均年齢10歳、平均体重8kg)7匹を用いた。実験方法は、ケタラール麻酔下、経腹膜的に前方から腰椎部の4椎間板(L3/4〜L6/7)に対する処置をおこなった。すなわちキモパパイン500u/0.2ml注入、コンドロイチナーゼABC 2u/0.2ml注入、炭酸ガスレーザーによる蒸散、および鉗子による髄核摘出である。 MRI上、若年群では48週までに全処置椎間板で、髄核部分の輝度は回復した。壮年群では輝度の回復は乏しく、48週経過後においても、高輝度部分は非処置椎間に比較し小さく、さらに椎間間隙の狭小化を呈していた。レーザー照射後96週では、処置椎間の著明な輝度低下を認めた。病理組織所見上は、48週若年群では線維輪の髄核側凸の変化は持続するものの、基質および椎体軟骨終板のSafranin-0染色性はほぼ完全に回復し、プロテオグリカンの産生が示された。壮年群では、線維軟骨細胞ならびに基質の量、染色性のいずれにおいても若年群に劣り、椎体軟骨終板の損傷、染色性の低下も著しく、軟骨下骨による侵食像を認めた。一部では、髄核部分はシュモール結節状に椎体に迷入し、線維輪との間には肉芽組織が存在し、著明な椎間板変性所見を認めた。 炭酸ガスレーザーは、その効果、組織障害性、修復より見て、処置後12週までの早期においては、理想的な椎間板内療法としての条件を備えていると考えられた。しかしながら、長期的には実験動物若年群、壮年群ともに各療法間の差は少なく、壮年群では椎間板変性を惹起することが示された。
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