研究概要 |
カルシウム依存性プロテア-ゼであるカルパインには、低濃度(μM)のCa^<2+>で活性化されるカルパインIと高濃度(mM)のCa^<2+>で活性化されるカルパインIIの2型がある。これまでの我々の研究で、成長軟骨石灰化層にカルパインIIが存在すること、カルパインが強力な軟骨プロテオグリカン分解作用を持つことが明らかにされており、カルパインは内軟骨性骨化に促進的に働いていると推察される。そこで今回の実験では、同じ内軟骨性骨化を呈する骨折仮骨について、カルパインの動態を調べた。生後6ー8週齢のウィスタ-系ラットを用手的に骨折させ、外固定なしに飼育した。骨折後5ー28日で屠殺し、以下の分析をおこなった。生化学的には、骨折仮骨のみを採取し、DEー52クロマトグラフィ-にかけてカルパインを分離し、カゼイン分解反応でカルパイン活性を測定した。また、この活性のある画分がカルパインIIであることを、カルパインIIの抗血清をもちいたWester Blotで同定した。カルパインIIの活性は骨折後5日で最大値を示し、その後、急速に減少した。組織学的にはカルパインI,IIに対する抗血清を使用して、免疫組織染色(PAP法)にて、局在と経時変化を観察した。骨折後7、10日目の仮骨でカルパインIIが軟骨細胞内および細胞外基質に豊富に認められ、その後減衰した。カルパインIは染色されなかった。細胞外基質にカルパインIIが存在する部位では、サフラニンー0の染色性が低下しており、カルパインがプロテオグリカン除去に働いていると考えられた。そこで、軟骨仮骨の組織切片にラット腎由来のカルパインIIを作用させたあと、サフラニンー0染色をしてみると、その染色性が著明に低下した。以上の実験結果から、骨折仮骨においてカルパインIIが軟骨細胞外基質であるプロテオグリカンを分解し、内軟骨性骨化に促進的に働いていると考えられた。
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