関節軟骨の表面構造と最表層構造について形態学的な検討を行った平成3年度の結果を踏まえて、平成4年度には最表層構造のコラーゲン線維と関節周囲の滑膜組織との構造的関連性とコラーゲン線維の生化学的特性、そして関節軟骨と軟骨下骨組織との境界部の形態について検討し、以下の結果を得た。 1.最表層構造について 平成3年度に関節軟骨最表層にヒトでは10μm弱の、ラットでは2-3μmの厚さのその下層とは明かに区別される“輝板"の存在を認め、最表層は関節軟骨内でその下層の線維と連絡性を有しない独立した、無細胞性の線維層であることを明らかにした。平成4年度には、ヒト大腿骨頭の頚部の滑膜組織を骨頭側へ剥離し、剥離片の組織学的観察を行い、周囲の滑膜組織の滑膜下コラーゲン線維層と“輝板(関節軟骨最表層)"が機械的連続性を有していることを明らかにした。また免疫組織学的手技を用いて、“輝板"のコラーゲン線維の生化学的特性を明らかにした。 2.関節軟骨と軟骨下骨組織の境界構造について 7例の正常なヒト大腿骨頭の前額面の全割組織標本を作製し、荷重部と非荷重部について軟骨と軟骨下骨組織の境界の形態を比較した。軟骨と軟骨下骨組織の境界は一本の曲線として観察され、単位当たり曲線の長さをコンピューター・デジタイザーで計測し、その起伏率を求めた。その結果、荷重部における境界が非荷重部に比べて有意に起伏に富んでいることが判明した。この所見は、軟骨・骨境界部の形態の形成には加わる力学的ストレスの強弱が関与していることを示唆している。
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