研究概要 |
平成3年度は、加速度計測により膝関節の側方動揺性を定量的に評価し、変形性膝関節症患者の歩行パターンの類型化を行ったが、当該年度はさらに加速度計測法の再現性および信頼性について基礎的検討を加えるとともに、膝関節の側方動揺性に及ぼす種々の条件について研究を行い、以下の研究成果を得た。 1.正常人40名40膝(平均年齢55歳女性)を用い、加速度センサーの設置位置および固定方法の相違による影響を検討した。その結果、脛骨結節部、腓骨頭部、脛骨内顆部の加速度解析結果は画像解析結果とほとんど差がなく十分な精度があり、またセンサーの固定方法では、腓骨頭部にテープで固定する方法が有用であった。 2.同一対象では日時を変えた測定でも十分な加速度値の再現性が得られた。 3.膝の側方加速度値は、歩行速度の増加、坂道歩行、重量物運搬歩行などのストレス歩行によって有意に増大することを明らかにした。この増大の度合いは、正常膝よりも関節症膝の方が大きい傾向を認めた。 4.足底板の補高厚を変えて加速度に及ぼす影響を検討した結果、側方加速度値は足底板を装着しない場合とそれぞれ補高厚13mmの内・外側楔状足底板を使用した場合で危険率1%以下の有意差を認めた。内側楔状補高厚を13mmから10mm,7mmと徐々に減少させ、次に外側楔状補高厚を7mm,10mm,13mmと徐々に増加させると、それに相関してlateral thrustのピーク値が減少した。また足底板の徐痛効果を認めた例に著明なthrustの減少を認めた。 5.平成3年度に高位脛骨骨切り術を受けた20人の患者の加速度パターンを術前と比較し、矯正角との関連を調べたところ、術前に認めたlateral thrustパターンは消失し、矯正角の大きい例ではmedial thrustパターンに変化していた。 6.関節症膝の側方動揺性を減少させる新しい補装具を開発し現在臨床治験中である。
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