慢性関節リウマチ(RA)の動物モデルであるタイプIIコラーゲン関節炎マウスを用いて、その病因を明らかにするためにリンパ球の各分化過程における異常について検討した。 8週齢のDBA/1Jマウスを用いて、型通りにタイプIIコラーゲン関節炎を発症させた。感作前、感作後2、4、6、8週時に骨髄血、胸腺、リンパ球、末梢血を採取し、それぞれより比重遠沈法によりリンパ球を分離した。各リンパ球のマイトジェン刺激、タイプIIコラーゲン刺激に対する増殖能を検討した。さらに、自己抗原に対する反応をみるためにブロメリン処理マウス赤血球に対する自己抗体の存在を免疫プラーク形成細胞数を計測した。また、前年度の続きとして、滑膜のリンパ球サブセットを免疫組織学的に検討した。 各種マイトジェン刺激による増殖能の検討では、各臓器よりのリンパ球にて有意の変動は示さなかった。一方、タイプIIコラーゲン刺激に対する増殖能の検討では、各臓器ともに増殖能の増加を認めた。その反応の程度はリンパ節のリンパ球に最も強く認められた。自己抗体の検討では、いずれのリンパ球においても赤血球に対する明らかな自己抗体の存在を認めなかった。滑膜のリンパ球サブセットの検討では、サプレッサー、キラーの減少とヘルパーインデューサー、B細胞の増加を認めた。 前年度の結果も含みタイプIIコラーゲン関節炎のリンパ球は、RAと同様のリンパ球サブセットの変化をきたし、しかもその変化は骨髄、リンパ節、末梢血、滑膜で認められた。すなわち、本モデルにおけるリンパ球異常は骨髄レベルで既に存在しており、その後の分化過程での異常によるとは考えにくい結果が得られた。一方、リンパ球機能の検討からはRAと同様にタイプIIコラーゲンを抗原として認識していると考えられたが、自己抗原には反応を示さなかった。
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