研究概要 |
PEEPは血漿心房性ナトリウム利尿ペプタイド(ANP)を減少させるとされている。今回,PEEP負荷時の循環動態変動を経食道エコ-を用いて測定し、循環動態の指標から血漿ANP濃度予測の可能性を検討した。 (対象および方法)18歳から45歳までの非開腹手術患者14名を対象とした。手術開始後の循環動態が安定した時点から,PEEP10cmH_2Oおよび15cmH_2OをPEEPにバルブにて各々1時間負荷し,循環動態変動と血漿ホルモン濃度を測定した。循環動態の指標として直接動脈圧,中心静脈圧,左房径,最大心房中隔振動幅,肺静脈血流S2波最大速度,左心室流入血流,心拍出量,左心室内径短縮率を選んだ。 (結果)PEEP負荷にて,心房中隔振動幅,S2波最大速度,心拍出量は有意に減少した(P<0.05)。A/R,中心静脈圧はPEEP10cmH_2Oから有意に増加した。また左心室内径短縮率にはPEEP負荷時には著明な変動は認められなかった。血漿ANP濃度はPEEP前43.9±8.7pg/mlからPEEP15cmH_2Oでは33.0±7.7pg/mlと減少した(P<0.05)。しかし,今回の心計測値と血漿ANP濃度との間に強い相関は認められなかった。 (考察)今回の経食道エコ-による循環動態の変動では,肺静脈血流S2波最大速度減少により,循環動態抑制は前負荷の減少による事が示唆された。今回のPEEP負荷時には,心抑制ANPと濃度減少が共に見られたが,血漿ANP濃度と相関する指標は見いだせなかった。その原因として,今回求めた指標がPEEP下では必ずしも心房張力と相関しないこと,また既報告とは対象患者の相違が考えられた。
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