1992 年度実績報告書

低酸素負荷時の、熱ショック蛋白質(HSP)の誘導

研究課題

研究課題/領域番号	03670721
研究機関	富山医科薬科大学
研究代表者	伊藤祐輔富山医科薬科大学, 医学部, 教授 (70018307)
研究分担者	増田達富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (20173750)
キーワード	低酸素 / 熱ショック蛋白
研究概要	虚血時には、脳や心臓が傷害を受け易いと、従来から言われてきた。確かに、心停止などのように血流が完全に止まり、どの臓器も同じ条件下におかれた場合は、そのような結果になるかも知れない。しかし、我々の実験系では、負荷時間が短い場合(5%酸素、10分間)は酸素分圧のみの低下であり、また低酸素負荷の時間を延長した場合(5%酸素、30分間)は心拍数が半減し、これは不完全な虚血に相当する。このように不完全な虚血状態の時は、消化器系統主として小腸が最初に傷害を受けまた致命傷となる。これにはAcker H(1983)らの報告があり、血流が低下した場合、血流は優先的に脳や心臓にまわり、他の臓器はより厳しい虚血状態になり傷害を受けると考える事で理解出来る。 5%低酸素では時間を延長しても神経細胞の脱落が見られる程の負荷が得られないので、筋弛緩薬の投与下で、ベンチレーターを3分間停止するハードな負荷をかけた。この系では、心拍数が正常時の半分に低下し、PaO_2=20-23mmHgにまで低下する。また、この負荷後生存し得るのは負荷後3-5日目までで、消化器系の障害が死因となる。このハードな負荷では、マイルドな負荷の場合と比べて、HSPの誘導量は増加した。また、HSPの誘導はいずれの負荷でも、脳のみならず、肝,腎,腸,の各種の臓器で見られた。マイルドな負荷の場合と、ハードな負荷の双方において、1日後と2日後に2回目の負荷をかけてみたが、HSPが誘導されているにもかかわらず、傷害はむしろ累積的で耐性の獲得は見られなかった。小腸、盲腸には充血や出血が見られたが、このような場合でも、腸に分布する神経末端の神経細胞には特に変化は無かった。 HSPによる細胞耐性の獲得は、神経細胞に限るものかも知れない。

研究成果
(6件)

すべてその他

すべて文献書誌 (6件)

[文献書誌] Hirota K.,Ito Y.,Kuze S.,and Momose Y.:"Effects of halothane on electrophysiologic properties and cyclic adenosine 3',5'-monophosphate content in isolated guinea pig hearts." Anesth.Analg.74. 564-569 (1992)
[文献書誌] Yamazaki M.,Masuda T.,Ito Y.Kuze S.,and Momose Y.:"Changes in rat striatum catecholamine during hypoxia with reference to protective effects of flunarizine." Pharmacol.Toxicol.70. 294-298 (1992)
[文献書誌] Yamazaki M.,Ito Y.,Kuze S.,Shibuya N.,and Mmose Y.:"Effects of ketamine on voltage-dependent Ca^<2+> currents in single smooth muscle cells from rabbit portal vein." Pharmacol.45. 162-169 (1992)
[文献書誌] Kuze S.,Naruse T.,Yamazaki M.Hirota K.Ito Y.,and Miyahara T.: "Effects of sodium L-Lactate and sodium racemic lactate on intraoperative acid-base status." Anesth.Analg. 75. 702-707 (1992)
[文献書誌] 久世照五、藤村純子、浜田富美男、成瀬隆倫、岩瀬久美、釈永清志、窪秀之、畠山登、増田達、広田弘毅、桐山昌子、山崎光章、増田明、伊藤祐輔、渋谷伸子、佐藤根敏彦、小泉保: "薬物動態から見た乳酸代謝." 臨床麻酔. 16. 873-879 (1992)
[文献書誌] 久世照五、畠山登、伊藤祐輔、中丸勝人、奥野政一、佐藤根敏彦、林隆一: "本院におれる手術申込システムとその活用「麻酔・集中治療とテクノロジー1992」盛生倫夫、風間富栄、池田和之、尾山力編" 克誠堂出版、東京, 5 (1992)

1992 年度 実績報告書

低酸素負荷時の、熱ショック蛋白質(HSP)の誘導

研究代表者

伊藤 祐輔 富山医科薬科大学, 医学部, 教授 (70018307)

研究成果

[文献書誌] Hirota K.,Ito Y.,Kuze S.,and Momose Y.:"Effects of halothane on electrophysiologic properties and cyclic adenosine 3',5'-monophosphate content in isolated guinea pig hearts." Anesth.Analg.74. 564-569 (1992)

[文献書誌] Yamazaki M.,Masuda T.,Ito Y.Kuze S.,and Momose Y.:"Changes in rat striatum catecholamine during hypoxia with reference to protective effects of flunarizine." Pharmacol.Toxicol.70. 294-298 (1992)

[文献書誌] Yamazaki M.,Ito Y.,Kuze S.,Shibuya N.,and Mmose Y.:"Effects of ketamine on voltage-dependent Ca^<2+> currents in single smooth muscle cells from rabbit portal vein." Pharmacol.45. 162-169 (1992)

[文献書誌] Kuze S.,Naruse T.,Yamazaki M.Hirota K.Ito Y.,and Miyahara T.: "Effects of sodium L-Lactate and sodium racemic lactate on intraoperative acid-base status." Anesth.Analg. 75. 702-707 (1992)

1992 年度実績報告書

伊藤祐輔富山医科薬科大学, 医学部, 教授 (70018307)