研究概要 |
胆嚢、総胆管、大十二指腸乳頭の感覚神経支配を明らかにする目的でWGAーHRPの逆行性および順行性軸索内輸送を用いて、仔イヌ(2.0〜3.0kg)で実験を行った。実験において動物を処置する場合は深麻酔下に行った。胆嚢壁にWGAーHRPを5〜10μl注入すると、標識細胞は両側の第2胸神経(T2)から第4腰神経(L4)の脊髄神経節(DRG)に観察されたが、それらは右側に多く、そのなかでも右側のT6〜T11のDRGに特に多数認められた。また少数ではあるが、右側の第5〜7頸神経(C5〜C7)のDRGにも標識細胞が認められた。総胆管壁の1ケ所にWGAーHRPを5〜10μl注入すると、標識細胞は両側のT3〜L2のDRGに観察されたが、それらは右側に多く、特に右側のT8,T9,T11,T12のDRGに多数認められた。総胆管壁の3ケ所に各3μlのWGAーHRPを注入した例では、標識細胞の総数は1ケ所注入例より増加したが、標識細胞が分布しているDRGの分布には大きな差は認められなかった。しかし、3ケ所注入例では両側のC5とC6のDRGに少数の標識細胞が観察された。大十二指腸乳頭へWGAーHRPを注入する場合は、十二指腸を切開し、大十二指腸乳頭を確認し、直視下に5μlのWGAーHRPを注入した。標識細胞は両側のT2〜L1のDRGにみられたが右側に多く、特に右側のT7〜T12のDRGに多数認められた。大十二指腸乳頭注入例では頸部のDRGに標識細胞を認めることはできなかった。 これらの臓器内における感覚神経の走行と分布を観察するために、右側のT7〜L1のDRGのうち連続する3分節のDRGにWGAーHRPを各3〜4μl注入した。標識線維は胆嚢および総胆管の漿膜に多数認められ、それらは粘膜固有層に進入し、粘膜上皮直下まで達するものも認められた。大十二指腸乳頭では、十二指腸の粘膜固有層に標識線維が多く認められ、粘膜上皮の基底部の基底膜直下に達するものも観察されたが、乳頭部には標識線維は多くは認められなかった。
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