1.腎阻血時の腎障害に対する静脈麻酔薬の影響について検討した。[方法]9週令の雄ウィスター系ラットを用いスギヤマゲン代謝ケージ中で麻酔下(F10_20.3)に左腎動脈を30分間阻血し、阻血解除後さらに90分間麻酔を維持した。3実験群を作った。(1)群:1.3MACエンフルラン、(2)群:阻血前にペントバルビタール30mg/kgをボーラス投与、阻血と同時に30mg/kg/hrで持続投与した。(3)群:阻血前にフェンタニル10μg/kgをボーラス投与、阻血と同時に50μg/kg/hrで持続投与した。阻血側腎の壊死面積を測定した。[結果]壊死面積はフェンタニルで最も高く、ペントバルビタールでもエンフルランより高く、両静脈麻酔薬はエンフルランよりも強い腎障害性を示した。2.腎阻血後の臓器障害に及ぼすハロゲン化麻酔薬の影響について検討した。[方法]実験1と同じ阻血モデルを作り検討した。実験群として(1)ハロタン群、(2)イソフルラン群、(3)エンフルラン群、(4)セボフルラン群を作った。腎の壊死面積、尿中γGTP、NAG、血中無機フッ素、逸脱酵素、ライソゾーム酵素を測定した。[結果]腎阻血後に壊死を含む腎障害が生じ、壊死の程度はエンフルランで高くイソフルランで低かった。血清逸脱酵素、ライソゾーム酵素の上昇等より肝にも障害が起きることが示唆された。麻酔薬間ではエンフルランが不利な影響を及ぼす事が考えられた。3.エンフルラン麻酔下の腎阻血後の腎障害に対するアロプリノールの効果について検討した。[方法]実験1と同じ阻血モデルを作り検討した。2実験群を作った。(1)群:1.3MACエンフルラン、(2)群:右外頚静脈よりアロプリノール3mg/kgをボーラス投与後エンフルラン麻酔下に阻血を行った。[結果]壊死面積はアロプリノールで低く抑えられ、腎組織中γGTP、NAGは高く維持された。また腎重量/体重比は低く、アロプリノールはエンフルラン麻酔下の腎阻血後の腎障害を軽減した。
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