当施設集中治療部に入室し機械的人工呼吸下にある患者のうち、感染があり臨床的に敗血症ないしその疑いと診断した患者10名について酸素運搬能(以下D O_2)と酸素消費量(V O_2)との関係について検討した。 方法として、我々の開発した心拍出量連続測定装置(代謝モニタ-、パルスオクツメ-タ、混合静脈血酸素飽和度モニタ-及びヘモグロビンのデ-タからFickの式を用いて1分毎に心拍出量を演算するもの)を用いた。なお吸入酸素濃度が高いところでは代謝モニタ-(デルタトラック)の精度が低下するため、一部の症例では、スワンガンツカテ-テルによる心拍出量と動脈血・混合静脈血酸素含量較差とからD O_2とV O_2の両者の値を求めた。 結果 実地臨床上、必ずしも十分な範囲のD O_2の変化を得ることはできなかったが、今回検討した範囲では、D O_2が1500ml/minまではV O_2の直線的に上昇し、両者の間には高い正の相関が認められた。これ以上のD O_2については測定ポイント数が少なく断定的なことは言えないが、上昇がなだらかになる傾向も認めた。すなわち我々の仮説である、敗血症やARDSの患者では、D O_2とV O_2との関係において、上昇からプラト-になる変囲点が、正常人に比べて上方にずれているだけである可能性が示唆された。 ただし今回の測定は、連続測定装置あるいはスワンガンツカテ-テル法のいずれを用いた場合でもカップリングデ-タとの批判を免れないため、今後両者の測定を別々の方法で行って再検討を加える予定である。
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