研究概要 |
帯状疱疹の発症頻度は加齢に伴い高くなるので,本邦のような高齢化社会では重要な問題になってきている.私どもは急性期帯状疱疹痛に対する神経ブロック療法の期間は,年齢よりも帯状疱疹そのものの重症度により高い相関を示すことを明かにし,帯状疱疹の重症度は水痘・帯状疱疹ウイルスに対する最高の補体結合抗体価により客観的に,しかも定量的に定義されることを明らかにした.今回は補体結合抗体価よりもより連続的な指標であるenzymeーlinked immunosorbentassay(ELISA)により水痘・帯状疱疹ウイルスに対するIgG抗体価とIgM抗体価を測定し,急性期帯状疱疹痛に対する神経ブロックの治療期間との関係を検討した. 【対象と方法】帯状疱疹発症10日以内に急性期帯状疱疹痛に対して交感神経ブロック療法を開始し,基礎疾患を有していなかった60例(軽症12例,中等症30例,重症18例について検討した.交感神経ブロック以外の治療法としてアシクロビル(500mg/日)またはビダラビン(600mg/日,5日間)を併用した.水痘・帯状疱疹ウイルス対する抗体価は初診時,その後は1週毎に採血し,ELISAで測定した.抗体価と治療期間との関係は治療期間の対数処理を行い,相関関係を求めた.【結果】重症度別に年齢ならびに初診までの期間に3群間で有意の違いは認めなかった.神経ブロックの治療期間は軽症群では10^<1.45>±^<0.10>,中等症群では10^<1.78>±^<0.07>,重症群では10^<1.94>±^<0.10>であり中毒症は軽症に比べ(P〈0.05),重症は中等症に比べ(P〈0.05)有意に長期の治療を必要としていた.全例においてIgG抗体価の著増が認められたが,IgM抗体の明かな増加が認められたのは軽症例の5例,中等症例の18例,重症例では13例と,帯状疱疹の重症度がますほどその頻度は高くなっていた.しかし,最高のIgM抗体価と治療期間との相関はr=0.183で,有意の相関は認められなかった.
|