血管内皮細胞増殖因子の一つとして知られている塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)が、他の増殖因子と同様に腫瘍細胞、腫瘍組織に認められ、量的、質的異常を示すことがある。腎細胞癌におけるbFGFの発現機構を解明し、その腎細胞癌の発生、増殖、転移などに対する意味付けを行ないたい。 1.bFGFの測定(ELISA法) 腎細胞癌組織、正常腎組織のサイトゾ-ル分画内のbFGFをELISA法にて測定しようと試みたが、assay法が確立できなかった。 2.bFGFの測定(RIA法) RIA法による腎細胞癌組織、正常腎組織のサイトゾ-ル分画内のbFGFの測定を行なった。不特定の腎細胞癌組織(腫瘍部)と同一腎非癌部(正常部)との比較では、正常部で有意に高値を示した。しかし、von HippelーLindau病における腎細胞癌組織と正常部との比較では、腫瘍部で有意に高値を示した。 3.コラ-ゲナ-ゼ活性の測定 上記2.の結果がbFGFの組織での産生を直接反映しているのではなく、細胞外コラ-ゲンマトリクスにより修飾を受けている可能性があり、組織内コラ-ゲナ-ゼ活性を測定中であるが、一定の傾向を示す結果は出ていない。
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