研究課題
Bombesin(BMBS)とその抗体がヒト前立腺癌細胞の増殖に与える影響についてin vitroで検討した。今回使用した細胞は、ヒト前立腺癌樹立培養細胞株であるDUー145およびPCー3と、コントロ-ル群としてのヒト膀胱癌由来細胞株であるTー24およびEJー1、ヒト子宮顎癌由来細胞株HeLa S3である。これらの細胞の培養液中にBMBSおよび抗BMBSウサギ血清(AbーBMBS)を添加し、その後の生細胞数を経由的に計測して増殖状態を検討した。その結果、BMBS添加後にはDUー145とPCー3において明らかなBMBS濃度依性の増殖促進効果を認めたが、非前立腺癌由来細胞(Tー24、EJー1、HeLa S3)では増殖に対する明らかな影響を認めなかった。一方、DUー145、PCー3に対するBMBSの増殖促進効果は、AbーBMBSを添加すると有意に抑制された。また、AbーBMBSを単独で添加した場合でも、コントロ-ル群に比較してその増殖は有意に抑制された。前立腺癌細胞中におけるBMBSの存在の有無について免疫染色による検索を行った。上述5種の各細胞株を単層培養し、酵素抗体法によりBMBSの免疫染色を行ったところ、DUー145およびPCー3では細胞質内にBMBS様ペプチドの存在を認めたが、他の3種の細胞には認めなかった。一方、invivoでの検討では、ヌ-ドマウスの皮下にDUー145を移植後、AbーBMBSおよびコントロ-ルとしてPBSを腹腔内投与して腫瘍の増殖状態を観察した。その結果、コントロ-ル群では腫瘍体積は徐々に増大したが、AbーBMBS投与群においては腫瘍の増大は有意に抑制された。以上の結果から、BMBSはヒト前立腺癌培養細胞に対して増殖促進作用をもち、しかも同細胞自体がBMBS様ペプチドを産生分泌していること、すなわちBMBS様ペプチドはヒト前立腺癌細胞の自己分泌増殖因子autoーcrine growth factorとして作用しているものと思われた。
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