研究概要 |
若い週齢の高血圧自然発症ラット(SHR)、高血圧自然発症脳卒中易発症ラット(SHRSP)および正常血圧のウィスター京都ラット(WKY)にphenoxybenzamine(POB)を投与し、^3H-prolineを静注した後、腎動脈のcollagen,non-collagenous protein,elastinへのtritiated proline incorporationを測定した。腎動脈のnon-collagenous proteinへのprolineの取り込みは著しく高値で、とくにSHRSP,SHPではWKYに比し数倍の値を示した。POB投与は高血圧動物の血圧を下降させ腎動脈のnon-collagenous protein分画へのproline incorporationを減少させた。同様の現象がcollagenにもlesser extent(p<0.05)に生じたがelastinには血圧とprolineのelastinへの取り込み間に何の相関関係も認められなかった。SHR,SHRSPの腎動脈を外科的および薬理学的(アルコール、フェノール塗布)に除神経術を施行すると高血圧は改善されnon-collagenous proteinへのproline uptakeも低下した。βブロッカーの投与では上記の現症は認められなかった。すなわち、ヒトの本能性高血圧症のモデル動物では腎動脈の非コラジェン蛋白質の代謝亢進が昇圧の原因となっており、神経因子がトリガーとなってこの蛋白質代謝亢進が直ると推測された。ついで片側腎動脈ラットを作製し、同様にPOBを投与し、高血圧初期に上記と同様の検査を行うとともに中枢カテコールアミンを測定した。高血圧ラット(2K-1C)では視床下部のノルエピネフリン(NE)含量が低レベルであり、腸間膜動脈中のnon-collagenous protein,collagen代謝が亢進していることかが判明した。一方、慢性高血圧期の2K-1Cラットでは上記の現象は見られなかった。腎血管性高血圧症のモデル動物では、比較的小さな腸間膜動脈の非コラージェン代謝の亢進が昇圧因子の1つと見做され、それに視床下部のNEの低下が関与することが判明した。臨床例においても非コラジェン蛋白質、コラジェン含量は腎動脈で高く、高血圧の一因となっている。
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