研究概要 |
動物実験:外尿道括約筋にベータアドレナリン受容体刺激薬が,その疲労状態で刺激し収縮を起すことを前年度に報告した(雌犬)。今年度は疲労状態ではなくてもベータアドレナリン受容体刺激薬が外尿道括約筋を収縮することを確認した。更に外尿道括約筋を染色により速筋と弛筋に分けて同薬の効果を検索しているところである。臨床研究:多マイクロチップトランスデューサーカテーテルを使用した尿道各部における排尿エネルギー損失の程度は,ボランティアでは外尿道括約筋部で最も多く,膀胱頚部硬化症例では膀胱頚部で最も多いことは前年報告した。このことは,生理的狭窄部である外尿道括約筋でボランティアではHydraulic jumpが起ることを示し,膀胱頚部硬化症の患者では膀胱頚部の狭窄部でHydraulic jumpが起り外尿道括約筋部では起らないことを示している。外尿道括約筋より遠位である尿道球部の排尿エネルギーはボランティア及び膀胱頚部硬化症例ともに同等であった。このことは膀胱頚部硬化症例ではHydraulic jumpが1カ所すなわち膀胱頚部でのみ起ることを立証している。更に今年度は前立腺肥大症例における排尿エネルギー損失を検討した。前立腺肥大症例ではボランティアと同様に外尿道括約筋部で排尿エネルギー損失が多く,尿道球部の排尿エネルギーはボランティアより低かった。このことは前立腺肥大症では膀胱頚部,前立腺部尿道および外尿道括約筋部が一つの狭窄部を形成し,Hydraulic jumpがこの部で起ることを示している。両疾患ともアルファ遮断薬は排尿エネルギー損失を減少した。
|