研究概要 |
1.研究目的:加齢や病的状態で下部尿路の神経受容体が変化し排尿障害が惹きおこされるのではないかとの仮定で,動物では自律神経薬の作用を,そして人では多マイクロチップトランスデューサーカテを用いくわしい尿流動態検査の確立をめざし研究した。 2.研究実施計画:動物では加齢の一つのモデルとして外尿道括約筋の疲労状態の作成及び薬物の効果の変化を,人では正常,膀胱頚部硬化症および前立腺肥大症のくわしい尿流動態検査及び薬物の影響を順研究することとした。 3.結果。1)動物実験:陰部神経の長時間刺激により外尿道括約筋の疲労状態を作成した。これは電気刺激に対し尿道内圧が余り上昇しなくなることで確認した。この疲労はベータアドレナリン刺激薬で回復することも判った。この結果より高齢者の尿失禁には本薬が有効であろうとの推測が成りたつ。2)臨床研究:多マイクロチップトランスデューサによる尿流動態検査を確立したことにより尿道各部での排尿エネルギー損失をみることが可能となった。ボランティアでは外尿道括約筋部が生理的狭窄部で排尿エネルギーが最も低下し尿道球部でHydraulic jumpが起る。膀胱頚部硬化症では膀胱頚部が狭窄しているので前立腺部尿道で,前立腺肥大症では前立腺部尿道と外尿道括約筋部が一連となり狭窄部を作るので尿道球部でHydraulic jumpが起った。この様な例では狭窄の原因となっている部の治療が必要となるとの推測が成り立つので損失エネルギーを測定することは有意義であることが判明した。膀胱頚部硬化症にも前立腺肥大症にもアルファアドレナリン受容体遮断薬は排尿エネルギー損失を減少させたので治療薬となり得ることが判明した。
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