(目的)臨床上、転移を有する尿路上皮癌に多剤併用抗癌化学療法が用いられ、奏効率約70%と優れた治療効果が示されている。しかし、この治療法は転移巣への効果が原発巣に較べて低く、奏効期間も比較的短いため、優れた治療効果が予後に結び付いていない。これらの問題解決の糸口を発現するため可移植性膀胱癌を用いた動物実験を行った。 (方法および結果) 1.膀胱癌転移性腫瘍の作成:従来、転移巣の作製には可移植性腫瘍組織片を細切して血中に注入する方法が取られていたが、今回は継代培養細胞を用い、より単離された癌細胞による転移巣の作製を試みた。 a.肺転移巣の作成:継代中のマウス膀胱癌細胞株(MBTー2)を用いた。単離浮遊生細胞7.5x10^4個/mlをC3H/Heマウス尾静脈に注入、肺転移巣形成の有無を観察した。その結果、注入3週後では明かな転移巣形成は認められなかったが、6週後には多発性腫瘍の発生が肉眼的に明かとなり、8週後には転移巣のため担癌マウスは死亡した。 b.骨転移巣の作成:骨転移巣は最近報告された脊椎転移作製モデルに従って行った。すなわち、雌C3H/Heマウス腹部を切開、下大静脈のクランプを行った後にMBTー2細胞を尾静脈波に注入、脊椎転移巣形成の有無について現在追跡中である。 2.抗癌剤投与量の検討:多剤併用療法剤として用いられる薬剤の1/2LD_<50>はCDDP 10mg/kg、MTX 100mg/kg、ADM 15mg/kgであり、従って致適投与量としてはCDDP 5ー10mg/kg、MTX50ー100mg/kg、ADM7.5ー15mg/kgと設定するのが良いものと考えられた。
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