転移を有する(特に骨転移)膀胱癌に対する治療は困難である。現在臨床的にM-VACを始めとする多剤併用化学療法により、近接的にはまずまずの奏効率が得られるものの、その奏効期間の短かさと骨転移巣に対する効果の低さが問題となっている。我々はマウスの膀胱腫瘍細胞株であるMBT-2を用い、C3H/Heマウスにおいて人工転移モデルを作製した。これを対象として実験化学療法を行なった。腫瘍細胞の経尾静脈よりの移植と、下大静脈のクランプによって肺転移巣は100%に、また骨転移巣は移植2週后に約30%でみとめられ人工転移モデルとして使用可能であると考えられた。このモデルを用いて細胞株移植1週后に多剤併用化学療法を行い、その効果をみたが転移巣数、および対象臓器重量の減少は認められず、宿主の体重減少という副作用のみが認められた。ついで移植早期(1日後)に同様の多剤併用化学療法を行い、移植1週后の群と比較した。その結果、肺重量、転移巣数の数で差がみられ微小転移の段階では抑制効果が期待できるものと考えた。現在、この転移腫瘍組織においてBrdUを用いた細胞動態の解析を試みているところである。今后他の多剤併用化学療法の検討を行っていく予定である。
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