進行期尿路上皮癌に対する治療としてM-VACを中心とする多剤併用抗癌化学療法を種々試みた。その結果、M-VAC療法では約60%の奏効率が得られたが、これら症例の長期追跡結果では奏効期間が1年未満と短く、骨転移巣に対する奏効率が20%以下と低いなどの限界が明らかとなった。そこでこれらの限界への対応策を探る目的でFANFT誘導マウス膀胱癌細胞株MBT-2を用い、(1)In vitroでの各種抗癌剤の作用の強弱をMTT assay法を用いて確認し、(2)C3H/Heマウスを用いたin vivoでの実験系の確立と多剤併用抗癌剤の投与時期および投与量の増量の意義について検討した。その結果、M-VAC療法に用いられる4種の薬剤はいずれもMBT-2に対して高い抗腫瘍活性を有することが確認できた。MBT-2細胞をマウス尾静脈より注入して肺転移巣を作成したin vivoの実験では、MBT-2細胞注入2日後に抗癌剤を投与したマウス腫瘍転移巣は対照群に比較して抑制効果を認めたが、注入1週後に投与したマウスでは抑制効果は認められず、さらに2倍量の抗癌剤投与によっても抑制効果の増強は見られず、微小転移の時期に抗癌剤を投与することが奏効期間の延長につながるものと考えられた。骨転移巣モデル作成に関しては下大静脈クランプ後に尾静脈より腫瘍細胞を注入する方法は転移巣形成率30%と低くより確実な実験モデルの作成が必要であると思われた。またマウスMBT-2骨腫瘍巣には2倍量の抗癌剤でも効果が認められず、骨転移巣に効果が期待できないと言う臨床成績に一致するとともに単純な投与量の増加は副作用の増大につながるものと考えられた。
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