研究概要 |
我々は同系精巣細胞(TC)の2,3回の皮下注射のみで、アジュバントその他の免疫増強操作なしに、マウスに実験的自己免疫性精巣炎をほぼ100%の頻度で発症させることをみいだした。(Clin.Exp.Immunol.1991;Autoimmunity 1991)。この実験系を免疫制御の検定系として、男性不妊症の免疫調節療法の開発に努力してきた。 1.昨年度、この新EAOモデルをその前臨床期(preclinical phase)において抑制する能力をもつCD4^+T細胞株(C.Tsと命名)を、TC10回反復感作マウスから確立した(Clin.Exp.Immunol.,in press)。現在、千葉大学医学部附属高次機能制御研究センタ-免疫機能分野・谷口克教授との共同研究の下にC.Ts細胞のT細胞レセプタ-に関する研究が進行中で、Vα5鎖の使用が明らかとなった。 2.マウスの部分精製精子抗原の可溶性画分(deーmTA)を寛容原としてC3H/Heマウスに投与することによる特異的免疫寛容の誘導と精巣炎の発症阻止のモデルが完成した。この疾患制御モデルにおいて働く調節細胞はCD8^+のT細胞で、細胞障害活性をもたない真のサプレッサ-T細胞であることが証明された(Clin.Immunol.Immunopathol.1992)。 3.2.のEAO制御モデルで働いてると考えられるCD8^+の抗原特異的サプレッサ-T細胞株(TsーAと命名)を確立できた。すなわち、deーmTA(1mg/匹)3回静注後のC3H/He♂マウスからの脾細胞をmTAとヒトrILー2の存在下で5日間培養し、その後X線照射feeder細胞存在下での抗原添加期(mTA 10μg/ml,rILー2 10U/ml)と非添加期(rILー2 100U/ml)とを交互に反復して選択を行った。樹立できたTsーA細胞株は、正常マウスに1×10^7個を腹腔内移入しておくと、その後にEAO challengeを行ってもEAOの発症は著明に阻止された。このEAO発症阻止は抗原特異的であった(Proc.6th Ann.Meeting Japan Soc.Reprod.Immunol.,in press)。このTsーA細胞からの抑制性因子ないしサイトカインの産生につき検索を予定している。 4.本年度に企画したその他の研究に関しても、現在実験が進行中である。
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