無血清培養法により膀胱癌細胞株(HAMTー1)を樹立したことはすでに日本泌尿器科学会雑誌に報告した。以後、この細胞をヌ-ドマウスに移植し、継代をつづけている。現在、19代目となった。この腫瘍細胞はヌ-ドマウスで継代後も病理組織学的にはヒト膀晄原発の腫瘍と変化していない。現在、この株を用いて抗癌化学療法を行ない有効な抗癌剤を調べている。とくに、いかなる併用が良いかについて検討している。また、膀胱癌と腎細胞癌について初代培養に成功している。この成功率を上昇させるための条件や各種添加物の影響について検討を行なっている。また、初代培養細胞を用いて抗癌剤の感受性試験を実施し、有効な薬剤の選択と台剤併用の効果について調べている。 さらに、以上の研究とは異なるが、我々は以前にヒト尿中より蓚酸カルシウム結晶の成長を抑制する物質を抽出分離した。この本態は glycoproteinであり、nephrocalcinと命名した。今回ヒト腎癌の培養液中にnephrocalcinが含有させていることを見いだした。また、nephrocalcinの抗体をつくりヒト腎癌を染めたところ、腎癌細胞が染まることが判明した。また、臨床例において腎癌患者の尿中には高濃度のnephrocalcinが含まれていることが明らかになった。さらに腎癌の進行とともに尿中のnephrocalcinが上昇することを見いだした。これより、nephrocalcinはtumor makerとして有用であることが考えられる。
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