研究概要 |
われわれは血管性インポテンスの診断法として塩酸パパベリン陰茎内投与時の勃起曲線のパタ-ンと塩酸パパベリンの末梢血中への流出パタ-ンより血管障害の種類や程度の鑑別が可能とした。しかしし末梢血中のパパベリンの測定は高速液体クロマトグラフィによるため複雑で費用も高い難点があった。そこでわれわれはパパベリンと同時に陰茎内に投与して、測定が容易で安価であり、パパベリンと同様の流出パタ-ンを示す物質がないか検討してきた。これを條件に適した物質として第2世代の抗生物質であるセフオチアムが適していることが判った。セフオチアムは血中で代謝されず、しかもその測定は菌の発育阻止で容易にできる。われわれはセフオチアムを塩酸パパベリンと同時に投与後3分,5分,10分,15分,30分に採血しパパベリンとセフオチアムの濃度を同時に測定した。その結果セフオチアムの末梢血への流出量は3分から30分にわたりパパベリンのそれと極めて高い相関を示し(相関係数0.65〜0.92でいずれもP<0.01で有差あり)、セフオチアムの測定でパパベリンの代用が可能であることが判った。従って以後はセフオチアムの流出パタ-ン勃起曲線のパタ-ン分析より血管性インポテンスの鑑別を試みることとした。 しかし勃起状態の正確な測定は必ずしも容易ではない。陰茎周径増大変化の測定にはstrain gaugeを陰茎に装着するのが一般的でmercury strain gaugeが感度の点で最もすぐれている。しかし環境汚染の問題で水銀の使用が困難になってきた。そこでわれわれは水銀にかわるものとしてCaCl_2を検討している。CaCl_2 strain gaugeは感度の点で水銀に劣っていないが温度の変化に対して水銀のように安定ではない。そこで温度補正が必要にありすぐ実用化は無理である。しかし温度補正の自動化,メモリ-カ-ド使用による装置の小型化を実現しつつあり、研究期間内には実用化が可能と考えている。
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