われわれは血管性インポテンスの診断法として塩酸パパベリン陰茎内投与時の勃起曲線のパターンと塩酸パパベリンの未梢血中への流出パターンより血管障害の種類や程度の鑑別が可能とした。しかし末梢血中のパパベリンの測定は高速液体クロマトグラフィによるため複雑で費用も高い難点があった。そこでわれわれはパパベリンと同時に陰茎内に投与して測定が容易で安価であり、パパベリンと同様の流出パターンを示す物質がないか検討してきた。これら条件に適した物質として第2世代の抗生物質であるセフォチアムが最も適していることが判った。セフォチアムは血中で代謝されず、しかもその濃度測定は菌の発育阻止リングの計測で容易にできることが判った。そこで塩酸パパベリンとセフォチアムを同時に投与後経時的に末梢血中の両物質の濃度を同時に測定したところセフォチアムの末梢血中への流出量はパパベリンのそれと極めて高い相関を示し(相関係数0.65〜0.92でいずれもP〈0.01で有意差あり)、セフォチアムの測定でパパベリンの代用が可能であることが判った。従って以後はセフォチアムの流出パターンと勃起曲線のパターン分析より血管性インポテンスの鑑別を試みることにした。しかしセフォチアムの末梢血中への流出パターンからは主として陰茎海綿体からの流出静脈系の障害の状態は判るが、流入動脈系の障害の判断まではかなり困難であることが判った。そこで流入動脈系の検索法としてわれわれは99mTC-ヒト血清アルブミンを静注してシンチカメラで経時的に陰茎のシンチグラムを作成し関心領域を陰茎に設定しペノグラム曲線を作成しさらに塩酸パパベリンを陰茎内に投与してペノグラム曲線の変化をみることにより流入動脈系の障害の有無を判定することが可能であることが判った。従ってペノグラム曲線と同時に計測した勃起曲線のパターンをみることにより流入動脈系の変化が判定可能となった。
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