研究概要 |
ヒト前立腺癌におけるケラチンサブタイプの発現を免疫組織学的に検討し、前立腺癌細胞の異型度ないし発生起源を考察した。固定にはケラチンサブタイプの検討に最適のメタカルン液を用い、現在までに前立腺癌25例(生検16、手術4、剖検5)と正常ないし肥大の前立腺組織10例(剖検症例より)を収集した。通常のABC法で免疫染色し、一次抗体にはいずれもモノクロ-ナル抗体の34βE12(K5.10.11),CK8.12(K13.16),312C8ー1(K14),4.62(K19),RPN1165(K19),RPN1162(K7),35βH11(K8),CK5(K18),M20(K18),V9(Vimentin)およびHHF35(muscleーspecific actin)を用いた。正常前立腺の腺上皮にはK7,8,18が特異的に発現しその基底細胞にはK14,(5,10,11),(13,16)が特異的に発現していた。また、前立腺の上皮性細胞にはアクチン陽性像は認められず、前立腺基底細胞には筋上皮への分化を認めなかった。一方、多く(80ー92%)の前立腺癌細胞では、腺上皮に特異的なケラチンを有するが、基底細胞に特異的なケラチンはみいだしえなかった。また、ビメンチンは正常腺上皮に発現をみるが、前立腺癌細胞では発現をみなかった。生化学的には正常前立腺組織にK5,7,8,15,18,19が検出されているが、われわれは、免疫組織学的に、正常前立腺の腺上皮はK7,8,18を、基底細胞はK14を、それぞれ特異的に発現しているが、前立腺癌細胞には腺上皮特異的なケラチンは認められたが、基底細胞特異的ケラチンの発現を認めないことを明らかにした。以上より、前立腺癌細胞の多くは腺上皮分化を示す細胞から発生すると考えられる。
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