研究概要 |
当教室で発現したカルシウム・リン脂質結合蛋白(カルフォバインディン:CPBー1)の胎盤組織、各種培養細胞、および婦人科悪性腫瘍でのmRNA発現について、Northern blot法とin situ hybridization法(ISH)で検討した知見について報告する。Northern blot法では、組織あるいは細胞から抽出したmRNAを ^<32>pをラベルしたCPBー1 cDNAをプロ-ブとしてhybridizationを行った。その結果、約1.6kbにCPBー1 mRNAの単一のバンドを認めた。また、I.S.H.法では、CPBー1 cDNAを鋳型としてビオチン結合dUTPを組み込んでPCR法を行い451bpのビオチン標識DNAプロ-ブを作製しシグナルの検出を行った。1)胎盤組織のCPBー1 mRNAの発現をNorthern blot法で検定したところ、妊娠週数別胎盤では、妊娠初期胎盤や中期胎盤では正常満期胎盤に比較してその発現は多い傾向にあった。また,胞状奇胎では非常に強いシグナルを認めた。妊娠中毒症胎盤では、正常胎盤より発現の強いものを多く認めたが,逆に少ないものもあり妊娠中毒症などの病的状態ではCPBー1の発現が一定しないという事実を知り得た。また、I.S.H.法により胎盤の脱落膜細胞、絨毛膜細胞にCPBー1mRNAをシグナルを認めたことから、胎盤の個々の細胞がCPBー1を発現していることが証明された。2)各種培養細胞を用いた検討では、臍帯血管内皮細胞、羊膜細胞、HLー60細胞についてmRNAを抽出してNorthern blot法をおこなった結果、全ての細胞で約1.6kbにCPBー1 mRNAの単一のバンドを認めた。3)婦人科悪性腫瘍に関して、子宮内膜癌組織でNorthern blot法を行ったところ、正常内膜組織に比較してCPBー1 mRNAの減少を認めた。I.S.H.法でも同様の所見を認めた。また、子宮頚部癌でI.S.H.法を行ったところ、扁平上皮の傍基底細胞ではCPBー1 mRNAの発現が認められたが、癌組織の細胞では発現の減少を認めた。以上の知見から、CPBー1が癌化のメカニズムに何らかの関係があるのではないかと推測された。
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