研究課題/領域番号 |
03670768
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
岡嶋 祐子 千葉大学, 医学部・附属病院, 助手 (10203978)
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研究分担者 |
深澤 一雄 千葉大学, 医学部・附属病院, 講師 (00189911)
稲葉 憲之 千葉大学, 医学部, 講師 (70114238)
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キーワード | P-450HFLa / 免疫組織化学 / 免疫電顕 / 癌胎児胎盤抗原 / 酵素免疫測定法 / 婦人科悪性疾患 / 腫瘍マーカー / 妊娠 |
研究概要 |
1979年に北田らによって抽出された胎児型チトクロームP-450(P-450HFLa)に関してavidin-biotin immunoperoxidase法により免疫組織学的検索とsandowich enzzyme immunoassayの開発とそれによる免疫血清学的検索を行った。対象は胎児、新生児、成人の病理組織標本、婦人科疾患及び成人肝の手術摘出標本とヒト胎盤、血清検体として健康非妊婦、妊婦、良性及び悪性婦人科疾患患者血清、臍帯血及び羊水を使用した。 この結果、1)P-450HFLaは胎児肝細胞の細胞質および細胞膜に明瞭な局在を認めた。このことは、免疫電顕による検索にても確認された。また、新生児や、成人の肝細胞にもその局在を認め、胎児肝に特異的ではなかったが、免疫染色の半定量的な分析によって、加齢とともに減少する傾向が示唆された。 2)胎児の肺、心、副腎、腎など肝以外にもその局在が認められた。 3)胎盤特にsyncytiotrophoblastに明瞭な局在が認められ、一種の胎盤蛋白であることが認められた。 4)婦人科腫瘍においては悪性疾患で85%(35/40)の高い局在率を示した。特に漿液性卵巣嚢胞腺癌で100%(10/10)、子宮内膜癌で89%(8/9)と著明であった。一方、良性疾患では、P-450HFLaの局在率は25%(8/32)と低率であった。 5)開発された酵素免疫測定系では、健康非妊婦と良性卵巣腫瘍および子宮筋腫患者95パーセンタイルである3units/mlを暫定的にカットオフ値とした。 6)妊婦血清の検索では妊娠初期と後期に血清値が上昇する二峰性を示し、分娩後は急速に非妊時のレベルに復した。 7)婦人科疾患患者の検索では、悪性疾患で95%(38/40),子宮内膜症で71%(5/7)と高い陽性率を示す一方、良性卵巣腫瘍および子宮筋腫では、それぞれ0%(0/8)、10%(1/10)と低率であった。しかし、悪性疾患においても血清レベルの絶対値はカットオフ値のせいぜい数倍にとどまった。以上のことよりP-450HFLaは大多数の腫瘍マーカーと同じく、癌胎児胎盤抗原の一種であることが判明し、婦人科癌や子宮内膜症のスクリーニングマーカーとして臨床応用の可能性が示唆された。
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