研究概要 |
1.他分化能を有するヒトEmbyonal carcinoma細胞株NEC-14は、in vitroで分化誘導物質HMBA10^<-2>M処理にて、形態的に分化した。分化誘導前後における細胞表面抗原、レクチン結合基、中間径フィラメント、細胞外マトリックス蛋白等の変化を調べ以下の結果を得た。1)分化誘導後ヒト主要組織適合抗原HLA-A,B,Cの顕著な発現がみられた。またstage specific embryonic antigens(SSEA)は分化誘導前後においてSSEA-1^-/SSEA-3^+→SSEA-1^+/SSEA-3^-の変化が認められた。2)中間径フィラメントの分化前後における変化の特徴は、誘導後にのみvimentinが検出された。以上の結果より、NEC-14細胞は、HMBA処理にて形態的に分化し、主として中胚葉由来間葉系成分の形質を誘導発現することが判明した。 2.上記のNEC-14細胞分化系において、癌遺伝子N-mycの発現はHMBA処理後一過性に低下し、24時間後に回復する。そこでN-mycをNEC-14細胞にトランスフェクションし、N-mycの分化に及ぼす影響について検討した。その結果、外来性N-mycを発現しているクローンではコロニー形成能やヌードマウス移植能が高まり、HMBA処理による細胞表面抗原の変化が明瞭でなくなり、HMBAによる分化誘導が抑制された。 3.ヒト卵巣teratocarcinoma培養株(PA-1)よりin vitroでのspheroid cultureにより安定して神経ロゼット形成を示すクローンPA-1/NRを分離した。この神経ロゼット形成過程には細胞外基質(ラミニン、タイプIVコラーゲン、テネイシン、プロテオグリカン)が重要な役割をはたしていることを電顕、免疫組織染色、ウエスタンブロット法により証明した。
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