不胞和の長鎖脂肪酸がエストロゲンおよびプロゲステロンレセプターに対し阻害作用をもつことが明らかになった。今回は先ずアンドロゲンレセプターについて検討を加えた。52日令のウィスター系雄ラットを去勢し、24時間後に前立腺を摘出した。この前立腺をホモゲナイズし、遠心しレセプターを採取した。レセプターの測定にはセファデックスLH20カラム法を用いた。長鎖不飽和脂肪酸であるオレイン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸はアンドロゲンレセプターと^3H-R1881の結合を阻害した。これに対し飽和脂肪酸であるパルミチン酸、ステアリン酸には阻害作用は認められなかった。アラキドン酸のこの阻害作用は用量反応的であり、阻害の様式は競合阻害ではないことが明らかになった。次いで脳内のプロゲステロンレセプターについて検討した。このレセプターもやはりオレイン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸により、^3H-R5020との結合が阻害された。ドコサヘキサエン酸による阻害は10^<-6>Mから認められ、10^<-4>Mでほぼ100%の阻害を示した。 次いでリン脂質のステロイドホルモンレセプターに対する作用を検討した。ラットの子宮からエストロゲンレセプターを採取し、これに各種のリン脂質を加え検討した。フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルエタノールアミン、リゾフォスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、カルジオリピンでエストロゲンレセプターと^3H-エストラジオールの結合に対する阻害作用が認められた。フォスファチジルイノシトールのこの阻害作用は用量反応的であった。プロゲステロンレセプターでも全く同様にリン脂質による阻害作用が認められた。フォスファチジルイノシトールを加えるとプロゲステロンレセプターの結合部位数が減少することが明らかとなった。
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