長鎖不飽和脂肪酸のステロイドホルモンレセプターに対する作用を検討した。ラットにジエチルスチルベステロールを投与し、子宮を摘出、プロゲステロンレセプターを採取した。これに各種長鎖脂肪酸を加え、レセプターと3H-R5020との結合をみた。アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、パルミトオレイン酸等の長鎖不飽和脂肪酸にこの結合の阻害作用が認められ、かつアラキドン酸のこの阻害作用は用量反応的であった。またこの阻害の様式は競合阻害ではなかった。ラット子宮のエストロゲンレセプターについて同様の検討を加え、やはり長鎖脂肪酸に阻害作用が認められた。この場合も阻害作用があるのは不飽和脂肪酸であり、飽和脂肪酸には阻害作用がなかった。雄ラットの前立腺を用い、アンドロゲンレセプターにつき検討すると、やはりオレイン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸にレセプターの阻害作用が認められた。またアラキドン酸のこの阻害作用は用量反応的であり、阻害の様式は競合阻害ではないことが明らかとなった。大脳皮質のプロゲステロンレセプターもやはり長鎖不飽和脂肪酸で阻害をうけ、ドコサヘキサエン酸ではこの阻害作用は10^<-6>Mから認められ、10^<-4>Mでほぼ100%であった。次いでリン脂質の作用を検討した。エストロゲンレセプターに対しては、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルエタノールアミン、リゾフォスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、カルジオリピンに阻害作用のあることが明らかとなった。プロゲステロンレセプターに対してもフォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリンに阻害作用が認められ、フォスファチジルイノシトールのこの作用は用量反応的であった。フォスファチジルイノシトールを加えるとプロゲステロンレセプターの結合部位数が大きく減少したが解離定数には変化がなかった。
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