研究概要 |
婦人科癌の発生原因を調べる目的で、まず当科で所有している卵巣癌由来細胞株8種を用いてRas,Jun,Fos,Myc,チトクロームP450(CYP)2E1.CYP1A1.3A4のノーザンハイブリダイゼーションを施行した。その結果、Jun,Fos,Myc,CYP1A1は認められたが、組織型による差は認められなかった。 発癌物質の大半はCYPによって活性化される。従って細胞内に存在するCYPは癌の発生に深く関与していると考えられる。CYPは肝臓外組織では微量しか存在しておらず、検出が困難であった。本研究ではReversetranscriptase-polymerase chain reaction(RT-PCR)を使用し人子宮内膜にCYP2E1のmRNAが存在していることを証明した。更に半定量するためにβ-actinによる補正法を確立した。RT-PCR産物は制限酵素による切断やシークエンスによりノンスペシフィックでない事を確認した。即ちインターナルコントロールとしてβ-actinのプライマーをCYP2E1のプライマーと同時に、アイソトープラベルしたdCTPと同一試験管内で増幅した。電気泳導後β-actinとCYP2E1のバンドをイメージアナライザーで定量化し、両者の比を求めて半定量とした。増幅数は16より40サイクルまで施行したところ高サイクルではプラトーになり正確な定量が因難であるため、実験は25サイクルで行った。15人の子宮筋腫の患者より手術時に子宮内膜を採取しグアニジン法でRNAを抽出した。RT-PCRを施行しβ-actinとCYP2E1のバンドの比を求めて手術当日の血清エストラジオール値とプロゲステロン値の相関を調べた。その結果、CYP2E1とプロゲステロン値との間には相関を認めなかったが、血清エストラジオール値との間に正の相関を認めた(相関係数0.654)。
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