研究概要 |
体外受精時に得られたヒト黄体化顆粒膜細胞の培養系を用い、その性ステロイド産生に対する免疫因子の影響を検討した結果、以下の知見を得た。 1.黄体化顆粒膜細胞のプロゲステロン産生は、自己(auto)および非自己(allo)末梢リンパ球との共培養により増加した。この刺激作用はリンパ球培養上清の添加によってもみられた。培養上清中の活性は56℃、30分間の加熱では失活しなかったが、70℃、15分間の加熱により失活した。また、限外濾過による分析から、この活性は分子量30,000以上の物質であると考えられた。 2.黄体化顆粒膜細胞のステロイド産生に対する種々のサイトカインの影響を検討した結果は以下のとおりである。インタ-フェロン(IFN)ーγはhCG刺激時のプロゲステロン産生を濃度依存的に抑制するとともに、hCG非添加時のプロゲステロン産生にも抑制効果を示した。この効果は他のIFN、すなわちIFNーα、IFNーβでも観察された。これに対し、マクロファ-ジ由来のサイトカインであるインタ-ロイキン1(ILー1)、tumor necrosis factorα(TNFーα)はhCG刺激時のプロゲステロン産生には影響を与えず、hCG非刺激時のプロゲステロン産生に対してはむしろ分泌促進傾向を示した。エストロゲン産生に対しては、ILー1・TNFーα・IFNーγともに抑制作用を示した。リンパ球由来の別のサイトカイン、ILー2はプロゲステロン・エストラジオ-ルいずれの産生に対しても影響をおよぼさなかった。したがって上記のリンパ球由来の黄体機能賦活因子は、IFN・ILー2とは別の物質であることがあきらかとなった。また同時に、黄体細胞はさまざまな免疫因子による機能調節を受けている可能性が示された。
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