子宮内膜癌において、成長因子受容体であるc-erbB-2proteinおよびepidermal growth factor receptor(EGFR)の発現を免疫組織学的に検討した。C-erbB-2proteinの発現は30/34(88.2%)に認められたが、発現増強は5/34(14.7%)のみであり、腫瘍の進行度とは相関していなかった。また、大部分の症例(64.7%)がc-eibB-2protein陽性、EGFR陰性と、正常内膜上皮と同様の発現パターンを示したが、8/34(23.5%)がC-ebB-2 protein EGFRともに陽性であった。このEGFR陽性例は進行癌に多く、腫瘍の分化度とも逆相関が認められた。すなわち、c-eibB-2 protein に加えてEGFRも発現することは、内膜癌の進展と関連している可能性が示唆された。 上記の検討に加えて、癌抑制遺伝子p53について検討を行った。免疫組織学的にp53の異常発現が認められ、p53遺伝子変異の存在が示唆された症例の5/30(16.7%)と、他臓器の癌よりも低頻度であった。ところが、p53陽性例は5例すベてが閉経後3年以上を経た患者であり、2/5例は通常の組織型以外(papitlany serous carcinomaおよびclear cell carcinoma)の形態を示し、また全例性ステロイド受容体発現が陰性であった。これをp53陰性の内膜癌と比較すると、性ステロイド受容体発現との間に有意な逆相関が認められた。内膜癌はunopposed estrogenというホルモン環境の中で発生するとされているが、臨床的にはestrogenの関与が全く示唆されない患者も存在する。今回の検討から、後者のestrogen-unrelatedの内膜癌の発生にp53遺伝子異常が関与している可能性が示唆された。
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