本研究課題で我々は、遺伝子構造が非常に類似したhCGβ遺伝子群とLHβ遺伝子がどのような機序で絨毛と下垂体の各々の組織で発現するか、また妊娠週数の変化によるhCGβ遺伝子発現の制御はどのように行なわれるかを検討し、以下のような結果を得た。1.hCGβとLHβの遺伝子はその上流部分の塩基配列が非常に類似しており、footprintassayで絨毛細胞核内蛋白質によってprotectされる部位のパターンも類似していた。その一部にhCGβ遺伝子においてはprotectされずLHβ遺伝子ではprotectされる遺伝子部位が発見された。gel shift assayによりこの部位に結合する因子は下垂体以外の組織に発現を認めたが下垂体には発現しておらず、下垂体以外の組織でのLHβ遺伝子の発現を抑制している可能性が示唆された。現在、LHβ遺伝子上流部分にin vitro mutagenesisを順次導入し、どの程度のhCGβ遺伝子との塩基配列の類似性があればLHβ遺伝子が絨毛細胞内でactivityを示すようになるかを検討中である。2.妊娠週数の異なる絨毛組織より得られた核抽出物を用いてhCGβ遺伝子上流部分のfootprint assayを行ない、転写調節因子の結合パターンの変化について検討したが大きな差異を認めなかった。これは多数の因子が遺伝子の同一部位に結合することによって一部の因子の変化がマスクされているからではないかと考えられる。3.activeなhCGβ遺伝子上流部分のcis acting elementに対する、転写制御因子の結合部位を明らかにした。またactiveなhCGβ遺伝子の上流部分とinactiveな偽遺伝子の上流部分の両方を用いてfootprint assayを行ない、両者の間のprotectionを受ける遺伝子部位の違いを検討した。
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