研究課題/領域番号 |
03670787
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
工藤 尚文 岡山大学, 医学部, 教授 (90127556)
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研究分担者 |
多田 克彦 岡山大学, 医学部附属病院, 助手
岸本 廉夫 岡山大学, 医学部附属病院, 助手 (30186217)
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キーワード | 子宮内胎児発育遅延 / 胎児カテコラミン / 胎児ストレス / 胎児ホメオスターシス / 副腎髄質 / 胎児予備能 / 羊水中ドパミン / ドパミン受容体 |
研究概要 |
実験的子宮内発育遅延(IUGR)ラット胎仔において以下の知見を得た。IUGR胎仔の副腎PNMT活性(phenylethanolamine‐N‐methyltransferase)には正常発育胎仔と比較し差は認められず、IUGR胎仔副腎におけるエピネフリン合成能は正常であった。この事実より、IUGR胎仔の副腎エピネフリン含量の減少(昨年度知見)は、慢性ストレスに対する副腎エピネフリンの分秘亢進によるものであることが明らかとなった。 ついで、臨床的にtypeII IUGRにおいて以下の結果を得た。 1.IUGR例における陣痛発来前の羊水中および臍帯動脈血中カテコラミン、特にエピネフリンは正常発育例に比較し有意な高値であった。 2.陣痛発来前のIUGR例の羊水中カテコラミン値は、正常発育例の正常経腟分娩終了時の羊水中カテコラミン値よりもさらに高値であった。 3.IUGR例における羊水中高カテコラミンは母体尿中エストリオール値正常症例やノンストレステストがreactiveを示した症例においても認められた。 以上の基礎的、臨床的検討より、IUGR胎児は慢性ストレスに対し、自己のホメオスターシスを保つべく交感神経-副腎髄室系を発動していることが認められた。このストレス代償機構の発動は胎児心拍数異常の出現に先行するものであり、羊水中カテコラミン、特にエピネフリンは胎児内部環境の悪化を鋭敏に反映することが明らかとなった。また、副腎髄予備能の減少はIUGR胎児の子宮内胎児死亡、分娩時の胎児仮死さらには母体外環境への適応不全の一因となっていると理解された。 さらに、本研究において卵膜におけるドパミン受容体の存在を確認したが、ドパミンのプロスタグランディン合成促進の報告と併せ考えると、羊水中に大量に存在するドパミンのヒト陣痛発来機構への関与が強く推察された。
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