下垂体より分泌されるprolactinは、夜間に増量することが知られているが、筆者らは、この夜間のpro‐lactinの増量には、松果体より分泌されるmelatoninが強く関与していることを明らかにしてきた。今回の研究は、このmelatoninのprolactin分泌機構を解明することを目的とした。 卵巣摘除成熟雌ラットを用い、melatonin100μgを頚静脈より投与することで、投与後60分にピークを示すprolactin分泌の増量が認められた。しかしながら、下垂体門脈血中レベルのDopamine量となるように頚静脈よりDopamine0.4μg/Kg/minを連続投与し、melatonin100μgを投与してもprolactinの増量は認められなかった。次に、melatonin投与後の視床下部正中隆起中のDopamine Neuron活性およびSerotonin(5-HT)Neuron活性の変動を検討した。Dopamine Neuron活性を強く反映するDOPAC含量、およびDOPAC/Dopamine比は、血中prolactinのピークに一致して、60分後に有意の低下を示した。一方、Serotonin Neu‐ron活性を反映する5‐HIAA含量、5‐HIAA/5‐HT比には継時的に有意の変動は認められなかった。更に、視床下部Dopamine活性を電気生理学的に検討するとmelatonin投与後に明らかなNeuron活性の減弱が認められた。 次に、melatoninのOpioid系に対する影響を正常月経周期を有する成熟婦人を対象に検討した。melato‐nin 1mgを日中13時に内服負荷させると、投与後3時間にピークを示すprolactin分泌の増量が示された。 一方、OpioidのantagonistであるNaloxone(1.6mg/h)の連続投与下にmelatoninを内服負荷してもprolactin分泌パターンには差は認められなかった。また、melatonin投与後に血中β-endorphin値の変動は認められなかった。 以上の検討成績から、melatoninのprolactin分泌の増量は、視床下部のDopamine Neuron活性を減弱させる機序に基づくことが強く示唆された。
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