研究概要 |
今年度は、卵管におけるプロスタグランディン(PG)合成の解明を目的として、PG合成における律速酵素であるホスホリパ-ゼA_2(PLA2)活性を測定し、さらにPLA2の調節因子につき検討した。 1.家兎卵管上皮細胞におけるPLA2の測定:成熟雌家兎より、卵管を摘出し、卵管膨大部および峡部に分離し、さらに蛋白分解酵素を用いて卵管上皮細胞を遊離しN_2ーcavitationにより破砕した。PLA2活性は、細胞破砕液をホスファチジルコリンと反応させ、遊離した脂肪酸をDole法で抽出しRIA法にて測定した。Ca^<++>依存性、およびpH依存性に関して家兎卵管上皮PLA2活性は、Ca^<++>(5mM)存在下、pH8.5の条件で最大であった。この条件下にて卵管膨大部上皮細胞のPLA2活性を卵管峡部のそれと比較した。膨大部上皮のPLA2活性は卵管峡部のそれより有意に高かった。この部位的差異は卵管のPG濃度が卵管峡部より膨大部で高いとする過去の報告と一致したことより、膨大部上皮のPLA2活性が卵管のPG合成に重要な役割を果たし、またPGを介して卵管平滑筋や線毛運動を制御していることを示唆した。 2.家兎卵管膨大部上皮PLA2活性の卵巣性ステロイドによる変化:成熟雌家兎を去勢後にエストロゲン(E)、プロゲステロン(P)、およびEとその後にPの各投与を行い(E群,P群,およびE→P群)、投与しないコントロ-ル(C群)と比較した。E群のPLA2活性(233.5±29.0pmol/min/mg)は,C群(190.8±9.8)に比し有意に増加した。E→P群のPLA2活性(116.3±25.9)は,C群に比し有意に減少した。これより、Eは家兎卵管上皮PLA2活性を上昇させ、またPはEの前処置下にそのPLA2活性を減少させることが示された。また家兎では卵巣性ステロイドが、卵管上皮のPLA2活性を介してPG合成を制御し,排卵後の卵管平滑筋の収縮性や線毛運動性を制御している事が示唆された。
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