本研究は今回科学研究費補助金を受ける以前より継続中のものであり、実験結果は次第に集積しつつあったが、今年度は妊娠ラット子宮縦走筋の単離化の実験系がほぼ完成し、良質の細胞群を回収する事が可能になった。その結果の一部は本年度既に論文となっている。妊娠21日の縦走筋細胞は長さ232.2±74μm、巾16.2±7.0μmであり、蛍光色素Furaー2取り込みによる細胞内遊離Ca^<2+>濃度の測定において、高K^+、アセチルコリン、オキシトシン投与により細胞内Ca^<2+>は増加するが、前二者は主としてCa^<2+>の細胞内流入により、後者は細胞内貯蔵部位からの遊離による事が推測できた。この実験系の使用により、各種アゴニスト投与による細胞内Ca^<2+>変動機構分析において特に時間経過に注目して今後研究を続行する予定である。次に、妊娠ラット子宮縦走筋の自発収縮および細胞内cAMP産生におよぼす塩酸リトドリンの長時間投与における効果の変動について検討したが、自発収縮は一旦完全抑制された後ある時間の後には再出現する。筋細胞培養下における細胞内cAMPは、一過性の増加の後減少して小さく変動する。双方の時間経過における変化は相関しているとは言い難い。そこで実際に収縮記録をしている筋切片の収縮変動とcAMP産生量を比較すると、収縮完全抑制時のcAMP量は有意に高いが、収縮再出現時の比較すると、収縮完全抑制時のcAMP量は有意に高いが、収縮再出現時のcAMPは低下するものの依然コントロ-ル値より有意に高い結果となった。従って、収縮再出現(脱感作)現象には細胞内cAMP産生量以外の要因の関与も示唆された。産科臨床上、切迫早産治療時も陣痛抑制剤塩酸リトドリンの脱感作現象がしばしば観察されるが、早産陣痛の質的評価が可能で薬効の変化が収縮抑制パタ-ンの変化より診断できれば有用であるので、2チャンネル外測陣痛モニタ-による陣痛の質的評価の研究を遂行中である。以上の研究につき、本科学研究費を主として消耗費に使用しているのが現状である。
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