妊娠ヒト子宮筋における塩酸リトドリンの脱感作発生機構の解明とMgイオンの効果

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03670793
• 研究機関: 福岡大学
• 研究代表者: 瓦林 達比古 福岡大学, 医学部, 助教授 (30142350)
• キーワード: 切迫早産 / 塩酸リトドリン / 脱感作 / β受容器 / cAMP

研究概要

前年度までに明らかにしてきた塩酸リトドリン長時間投与下での妊娠ラット子宮筋(縦走筋)の自発収縮パターンおよび細胞内cAMP産生量の経時変化の結果と対比させ、今年度は同筋切片の細胞膜β受容器の経時変化を観察した。まず、ラットを一晩交尾させ、翌朝雌の腟スメアにて精子を確認したものを妊娠0日として分離飼育し、妊娠21日に実験に供した。妊娠子宮からは縦走筋のみを採取し、97%0_2と3%CO_2で飽和した36℃のロック氏液中で培養した。次いで、リトドリンを添加した後設定時間に筋切片を取り出して-80℃の冷凍庫に保存した。β受容器量の変動については、ジヒドロアルプレノロール結合アッセイ法を用いた。結果は、(1)リトドリンで処理した筋切片のジヒドロアルプレノロール競合的結合より、リトドリンはβ受容器の強いアゴニストであることがわかった。(2)20分作用させたリトドリンとβ受容器量の用量作用曲線より、リトドリン3×10^<-8>M以上で細胞膜のジヒドロアルプレノロール結合部位の増加を示し、3×10^<-7>Mで最高となり、それ以上の濃度では次第に減少した。(3)リトドリン1.5×10^<-7>M.長時間投与下でのβ受容器量の変化については、投与20分後まではジヒドロアルプレノロール結合部位は増加し、その後コントロールレベルにまで減少して、90分以後は変動して推移した。以上の結果から、低濃度のリトドリンはβ受容器の膜表面への露出や合成などを含めた効果を呈し、高濃度は細胞内cAMP産生は増加しているものの、容易に受容器の脱感作を誘発することが判明した。また、長時間投与においては、前年度までに明らかにした細胞内cAMP量の変動と同様の経時変化を呈したことから、収縮性変化と膜のβ受容器量および細胞内cAMP産生量の変動は連動していることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] 瓦林 達比古、池田 雅彦、馬渡 秀仁、森下 富士夫、和泉 秀隆、白川 光一: "子宮筋の応形機能と加齢" Mebio. 9. 57-63 (1992)
• [文献書誌] T.Kawarabayashi,M.Emoto,H.Mohtai,F.Eguchi et al.: "Initiation of labor and infection." Med.Bull.Fukuoka Univ.19. 277-283 (1992)
• [文献書誌] 瓦林 達比古、池田 雅彦、馬渡 秀仁、塚本 卓治、白川 光一: "ヒト子宮における外測陣痛曲線および筋切片の収縮パターンの比較" J.Smooth Muscle Res.(1992)
• [文献書誌] T.Kawarabayashi,T.Tsukamoto,Y.Kaneko,M.Ikeda et al.: "Changes in -adrenergic receptors under long-term application of ritodrine in pregnant rat myomertium." Gynecol.Obstet.Invest.(1993)
• [文献書誌] K.Kuriyama,T.Nakashima,T.Kawarabayashi,T.Kiyohara: "Oxytocin inhibits non-phasically firing supraoptic and paraventricular neurons in the virgin female rat." Brain Res.Bull. (1993)
• [文献書誌] T.Kawarabayashi,K.Kuriyama,T.Nakashima,T.Kiyohara,H.Sugimori: "Oxytocin modulates oxytocin neurones in the paraventricular nucleus of female rats throughout pregnancy and parturition." Am.J.Obstet.Gynecol.(1993)
• [文献書誌] 瓦林 達比古(分担): "今日の診断指針 第3版、分娩遷延" 医学書院, 1486-1488 (1992)
• [文献書誌] 瓦林 達比古(分担): "今日の治療指針、第34巻、子宮復古不全" 医学書院, 680-681 (1992)