研究概要 |
胎児血中のIGF結合蛋白のligand blotによる解析では、正常発育の満期産児では、IGFBpー1,IGFBpー2,IGFBpー3,IGFBpー4の4つが確認できた。 満期産の発育遅延児ではIGFBpー2,IGFBpー1が増加しており,反対にIGFBpー3は減少しているのが見られた。早産児では、IGFBPー2が著しく増加しており、IGFBpー3は減少していた。以上より、胎児の発育過程でIGF給合蛋白の動態は変動し,これら個々の結合蛋白が胎児の特定の発育時期に生物学的な意義を持っていることが推測された。又、巨大児では母体が非糖尿病性のものでは、正常発育児と同様のIGF結合蛋白の動態が見られたが、母体が糖尿病のものではIGFBpー3の増加,IGFBpー2の減少が見られた。糖尿病母体より生まれた巨大児では、体重に比べ児の未熟性が著明であることが指摘されており、IGF結合蛋白が児の成熟にも関与している可能性がうかがわれた。 満期産の胎盤細胞培養系にIGFーIを添加すると、 ^3Hーグリシン, ^3Hーdeoxy ^ーglucoseの取り込みが促進されるのが観察された。又、時間的な経過を追うと、細胞内に取り込まれたこれらの物質が細胞より放出されることがわかった。細胞をこれらの物質で飽和しておいてからIGFーIを添加すると、コントロ-ルより有意に細胞からの放出が促進された。これらの結果より、IGFーIは胎盤細胞へのアミノ酸・糖の取り込みを促進するのみならず、取り込まれた物質の放出にも関与していることが考えられた。IGFーIのこの2相性の作用は、母体の胎盤介した栄養移送にIGFーIが関与していることを示唆するものと考える。
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