研究概要 |
老化現象を比較的早期に把握できるSDラットを対象として研究を行なった。本年度はコントロ-ル実験として成熟動物を用いて免疫組織化学的に末梢前庭感覚器とその神経経路における細胞骨格蛋白や神経伝達物質などの分布様式,密度などを検索した。方法は先ず全身潅流にて生体固定を行い,速やかに側頭骨および脳幹部を取り出し当該部位をクライオスタットあるいはマイクロスライサ-にて薄切した。その後抗原抗体反応,ABC反応,脱れ,透徹,封入を行ない光学顕微鏡にて観察した。細胞骨格蛋白の中間径フィラメントであるNeurofilamentは前庭の求心,遠心性神経線維や交感神経線維,大型の前庭神経節細胞に反応陽性であった。Vimentinは末梢前庭器の支持細胞や前庭神経節のシュワン細胞、Glial fibrillary acidic proteinは前庭神経核の神経膠細胞に陽性の所見が得られた。Cytokeratin(8,19)は末梢前庭器の支持細胞と暗細胞が陽性であった。更に微小管に関連するMicrofilament associated protein IIは前庭神経節細胞に反応が認められた。シナプス小胞の蛋白に特異的なsynaptophysinは末梢前庭や前庭神経節の神経終末に陽性所見が観察された。NeuropeptideとしてはSubstance PとCalcitonin geneーrelated peptideを検索したが,前者は求心性一次ニュ-ロンと前庭神経節の小型細胞に,後者は遠心性神経に陽性反応が認められた。電子顕微鏡による観察では従来の報告と同じように,前庭器の感覚細胞であるI型有毛細胞とII型有毛細胞が認められ、なんら病理学的変化は観察されなかった。またそれぞれの神経終末も特に病的変化は見出せなかった。
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