研究課題/領域番号 |
03670807
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今泉 敏 東京大学, 医学部・(医)・音声言語医学研究施設, 助教授 (80122018)
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研究分担者 |
細井 裕司 近畿大学, 医学部・耳鼻咽喉科学教室, 講師 (80094613)
原田 勇彦 東京大学, 医学部・耳鼻咽喉科学教室, 講師 (30010440)
新美 成二 東京大学, 医学部・音声言語医学研究施設, 教授 (00010273)
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キーワード | 聴覚障害 / 音声知覚 / 時間分解能 / 周波数分解能 / 母音知覚 / 有声・無声判断 / ディジタル補聴器 / 信号処理型補聴器 |
研究概要 |
話し言葉の聞き易さを最適に補聴する高機能の補聴器、ディジタル信号処理型補聴器の開発を目指して、聴覚系の基本的特性(純音聴力、時間分解能、周波数分解能)と言語音知覚の関係を調べた。以下の成果が得られた。1)伝音・内耳・後迷路性聴力障害者を対象に、コンピュ-タシミュレ-ションによって、純音聴力損失と言語音知覚能力とがどう対応するかを調べた結果、内耳性聴力障害者の一部と、後迷路性聴覚障害者においては、純音聴力損失から予測される言語音知覚能力を大きく下回ることが明らかになった。2)そのような障害者が引き起こす言語音の聞き誤りの特徴を、異聴地図という手段で解析したところ、伝音性および内耳性聴覚障害者の一部においては、ほぼ純音聴力損失から予測されるような異聴を起こすのに対し、後迷路性聴覚障害者では必ずしもそうではなく、特に子音の誤りが多いことが分かった。3)長さや刺激間隔を変化させた母音の聴取実験を行ったところ、感音性難聴者では音響的特徴の抽出と音素情報の統合過程の機能低下や時間的遅れが著しいと考えると、説明し易い結果が得られた。4)破裂子音の有声・無声判断に及ぼす音響的特性(基本周波数、無音区間長、音圧、VOTなど)と聴覚特性(純音聴力、周波数選択性、時間分解能など)との関係を調べた結果、両者は複雑に絡み合うことが明かとなった。時に、聴覚障害者にとって、無音区間長、音圧、基本周波数などの音響特性が語音聴取能を大きく左右することが明かとなった。現在、5)上記の結果を説明し得る聴覚系の基本的特性(時間分解能、周波数分解能)と言語音知覚の関係に関する精密なモデルを構成し、さらに、6)モデルによってディジタル補聴器に適した信号処理方式の検討をシミュレ-ションによって明らかにし、7)聞き易さを最適に増大し得るディジタル補聴器に適した信号処理方式を開発する、ための研究を進めている。
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